同名異曲を奏でる『日本のいちばん長い日』

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(画像はYoutube予告編より)
『日本のいちばん長い日』完成披露プレミア試写会が当たったので観賞。

実を言うと原田眞人監督の作風というかリズムがどうも自分は性に合わなくて避けていたりするんだけど、それでもまぁ『突入せよ! あさま山荘事件』とか『クライマーズ・ハイ』なんかは押えておいてるわけで、そういった観点からいえば今回の『日本のいちばん長い日』は避けて通れぬ箱根の関所。
そんな折運良く試写会が当選したのでありました。

完成披露試写ということもあり原田監督を筆頭に主演の役所広司・本木雅弘・松坂桃李さんらが登壇。
盛り上がりのある試写会でした。

ところで『日本のいちばん長い日』といえば、日本映画史に燦然と輝く同名の傑作が岡本喜八監督によって作られています。

今回の映画化はこの喜八作品のリメイクだとばかり思ってたんですが、どうもそこまで単純ではないようで。
基となった事件そのものは同一ではあるものの、相違が見えます。

まず’67年の喜八版は、原作が大宅壮一なのに対し、今回の原田版は半藤一利の原作。
これだけでも大きな違いかと思う。
もちろん脚本や演出も別物なので、同じ事件を扱っていても視点が違うのは当たり前。

けれど、青年将校の誰に重点を置くか、などは喜八版を手本としているようにも見えるし。

あるいは半藤一利氏の原作じたいが、大宅壮一版のリメイクとして執筆されそれを原作に据えたのが今回の映画化なのかもしれません。

そうすると、
喜八版=大宅壮一原作をベースとして、改めてこの事件を再映画化した、
というふうに見做したほうがいいのかも。
喜八版がどちらかというと阿南陸相に重きを置いて描いているのに対し、片やこの原田版は鈴木首相の周辺を丹念に描いていたり。

もちろん、天皇陛下の出番が大幅に増えたのは、平成の世になって四半世紀も過ぎた、という趨勢の表れでしょうか。

まあ喜八版とこの原田版のキャストの変化を比べるのも面白いので、できれば両方を観て比較してみてはどうでしょうか。

主要キャストを上げてみても、
鈴木貫太郎首相:笠智衆(1967)⇒山崎努(2015)
阿南惟幾陸相:三船敏郎(1967)⇒役所広司(2015)
畑中健二少佐:黒沢年男(1967)⇒松坂桃李(2015)

という違い。

三船⇒役所の阿南陸相はまあいいんですが、あの脂ぎった黒沢年男の役を凛々しい松坂桃李さんが演るというのもなんかおもしろいです。

 

あのスピーディでパワフルな喜八演出と相まって、完全に評価の固定した映画の教科書に載るような作品を再映画化するのはかなりプレッシャーだろうと想像できるのだけれど、それを実行した原田監督には敬意を評します。

冒頭、個人的には原田演出は肌が合わない、とお断りしましたが、今回の『日本のいちばん長い日』に関してはこれまでの原田作品の中ではいちばん面白く観ることができました。

 

この玉音放送に関するクーデター未遂事件は最近では『終戦のエンペラー』でも採り上げられていて、二・二六事件以上に昭和史のスリリングな出来事としては映像化に向いているのかもしれません。

 

太平洋戦争が終わって70年。

宮内庁が玉音放送原盤音源を公開したり、様々な区切りの動きがみられるこの夏です。

 

映画『日本のいちばん長い日』公式サイト

参考
宮城事件:「殺気立つ将校、忘れぬ」皇居警備94歳証言-毎日新聞

 

 

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