ブックレビュー|アーサー・C・クラーク『イルカの島』

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できるならクラークの小説はすべて読破したいと思っているのだが、そうした「俺の中のクラークスタンプ帳」の中でも本書は未チェックだったもののひとつ。こんなに有名な作品なのに。
とはいえ『火星の砂』も『海底牧場』も未読なのだけれど。早く読まなくちゃと思う今日この頃。

いわゆるジュヴナイルというジャンルにカテゴライズされる作品。

クラークのジュヴナイルといえばこの『イルカの島』と双璧を成すのが『宇宙島へ行く少年』ではないかと思うが、そちらが題名のとおり宇宙を舞台にしているのに対し、こちらはイルカが題材。海をテーマとしている。


※Amazonで検索したらkindle版しか見当たらない。クラークの小説が文庫で入手できない時代とは…

宇宙と海。アーサー・C・クラークにとって重要なモチーフであるこのふたつを、クラークが少年少女向けのジュヴナイル小説として著したことは重要な意味を持っているのではないか、と思う。

常に科学に目を向けさせる啓蒙者でもあったクラークが、自身にとって大切にしていたモチーフを少年少女に読ませるための題材にしたことは、そのままクラーク自身の姿勢も表しているのではないだろうか。

この『イルカの島』と『宇宙島へ行く少年』を入り口として、少年たちへ宇宙と大海への眼差しへと誘おうとするクラーク。
それは、とりもなおさずクラークの人類への深い信頼と希望を小説という形に転化したものだったのではないだろうか。

優れたジュヴナイル小説には必須項目である、主人公の成長物語=ビルドゥングスロマンもしっかりと描かれていて読後感も心地良い。

ただ、小説としての面白さ、という観点から鑑みると、少々盛り上がりに欠けるようにも感じる。
クライマックスの盛り上がりに関しては、『宇宙島へ行く少年』のほうがおもしろかったかな。

[2018.11.2読了]

 

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