ブックレビュー|矢部嵩『少女庭国』
ネットのレビューには「頭がクラクラする」だの「気が狂ってる」みたいな感想が見受けられたのだけれど、果たしてそうなのかどうかも気になる作品だったので読んでみたいと思った。
なんだかラノベか少女小説のようなカバー絵も惹かれたのもあるけれど、あにはからんやでこの書影にダマされた。
んで、この小説が嫌いか、というとそうでもない。だからといって好きという範疇には入らないと思う。自分にとっては。
ネタバレに関わることは書きたくないし、ネタそのものが価値そのものであるような作品なので、ここでは何も伝えられない。
或るひとつの設定を思いついて、それをひたすら脳内でこねくり回し世界を極限まで発展させてみたシミュレーション小説、とでも言うべきだろうか。
私的な信念として、物語の中の主人公あるいは登場人物というのは「世界を救う」か「その世界の秘密を暴く」ことを行動原理とすべきか、あるいはビルドゥングスロマンでなければならない…みたいな考えがあるのだけれど、それって囚われ過ぎなのかなあ。
この小説を読み終わっても、何も解決も読後の満足感も得ることはできない…と、思う。
個人的には「で、いったい何が言いたかったのこの小説は」みたいに思うしかなかったかな。
だからって駄作というわけではないと思う。傑作かどうかは…15年くらい経ってみないと分からない、かもね。
阿部和重とか東浩紀あたりが論じてくれるとか(ひょっとしてすでにしているかもしれないけれど)でもしないと、この小説の正しい読み方は判らんかもしれんねえ。
[2017/06/17読了]
著者は本来ホラー系作家とのこと。(不勉強のためこの作品で初めて知りました)