THEY LIVE,HE SLEEP~ロディ・パイパーの『ゼイリブ』
『ゼイリブ』は、ジョン・カーペンター監督による傑作SF映画。
いかにも低予算なんだけど、優れたアイデアでとてつもなくおもしろい作品となってて、ボクも大好きな1本だ。
ロードショー公開のときにスクリーンでこの映画を見て「むちゃくちゃおもしれー!!」と大満足で劇場を後にしたことを憶えてる。公開から既に30年近くが経ち、もはやクラシック映画の部類にカテゴリされるような代物ともなりつつあるのかもしれないけれど、その内容の面白さ・着想の斬新さは色褪せることはない。
昨年新文芸坐のオールナイトでひさびさにこの作品が銀幕にかかったのだけれど、面白さは初見の第一印象と変わらぬものだった。
ワクワク感、とも違う。ジャンルとしてはSFに加えて「スリラー」だから、ソワソワ感――あるいはゾワゾワ感とでもいうのか、ともかくその逆毛を撫でられるような感覚が心地いい。
…うーん、こんな表現しか思いつけない自分の筆が拙ないなあ。
その『ゼイリブ』に主演したロディ・パイパーが亡くなった。
ロディ・パイパーさんが死去|MMA IRONMAN|http://t.co/SHHSh4Dk1x
— MMA_IRONMAN (@captude71) 2015, 8月 1
Sad day. RIP Rowdy Roddy Piper. @WWE pic.twitter.com/8H6tEFr0Hq — Dana White (@danawhite) 2015, 7月 31
パイパーはプロレスラーで、’80年代にWWFで活躍した超人気選手。ハルク・ホーガンという絶対的スーパースターの時代に活躍したけれど、結局ホーガン人気に呑まれる形で、ホーガンに追随するようにライバル団体WCWに移籍…というような印象がボクにはあるのだけれど。
ホーガンさえ出てこなければプロレス界で主人公になってたのだと思う。長州力じゃないけれど、WWF~WCWではホーガンのかませ犬的なポジションに座らされていたように感じる。
あくまでもボク個人の印象だが、パイパーが映画の世界へ進出したのは、ホーガンの脇役に甘んじた鬱憤を他の世界で主役を張ることで晴らそうとしていたような気がする。
でも、その映画の世界でも演技の下手なホーガンに人気を越されてしまう。リングの上では光っていても、映画の中のパイパーはスクリーン映えしない地味なルックスだった。
ホーガンのほうも、自分に俳優の才がないのを自覚したのか、映画の世界から徐々にフェードアウトしていってしまった。
…って、こんなことを書いてたら、きっとアメプロファンから怒られると思うんだけど。
ただ、このホーガンの撒いた種が元で、WWEビンス・マクマホンは映画に熱心になり所属レスラーを続々映画に出演させ、あげくに製作会社WWEフィルムズまで設立してしまう。たぶん、ホーガンのハリウッド進出がなければビンスもここまで夢を見なかっただろうなあ。
ホーガンは俳優としてはあまりパッとしなかったが、WWEにホーガン不在の時代に”ピープルズ・チャンピオン”と呼ばれ不動の人気レスラーになったザ・ロックが役者として評価を受けスクリーンの常連となる。日本のファンにとっては”ロック様”の愛称で呼ばれた”The ROCK”は本人としてはプロレスに戻りたかったらしいが、ハリウッドのほうが手放そうとはしなかった。それくらいのスター性を醸す逸材だった。
『ワイルド・スピード』シリーズの常連顔になったドゥエイン・ジョンソンが”超”のつくくらい人気の元プロレスラーだったことなんて、もう若い観客は知らないかもしれない。
ホーガンのおかげで「レスラーは所詮B級役者」みたいなレッテルが貼られてしまって、どのレスラーが映画に出ても色眼鏡で見られるようになってしまったけれど、このドゥエイン・ジョンソンの登場でようやくまっとうな評価が与えられるようになったのではないだろうか。でなきゃこの後に続くバティスタもホーガン並のイロモノ扱いされていたハズだ。
ロディ・パイパーはそれでも『ゼイリブ』での佇まいを見るに、ホワイト・トラッシュの労働者然とした雰囲気は充分纏っているし、「何を演じても”ハルク・ホーガン”以外の何者でもない」ホーガンと違って、役柄によっては活きるキャラクターだったんじゃないだろうか。もちろん当時のパイパーだって決して演技が上手いほうじゃなかったけど、少なくとも大根のホーガンよりは俳優としては勘どころは良かったんじゃないかと思う。
けれど、人気やスター性はホーガンのほうが上回っていた。今の時代なら、味のある演技でドゥエイン・ジョンソンの立ち位置くらいにはなれたのかもしれない。
たぶん、そんなところがパイパーのめぐり合わせの悪さだったんだろう。
映画『ゼイリブ』を再観賞すると、中盤の同僚との格闘シーンが異常なほど長いことにびっくりした。
監督のカーペンターはこのシークエンスを摘まないことで、レスラーとしてのパイパーに敬意を表したかったんだろうね。
R.I.P.
ゼイリブ 通常版 [Blu-ray]
ゼイリブ [DVD]
ゼイリブ 初回限定版 [Blu-ray]
[Blu-ray]” /> [Blu-ray]” />
by G-Tools
【楽天ブックスならいつでも送料無料】ゼイリブ [ ロディ・パイパー ] |