『ワイルドスピード』シリーズからアメリカ人の車意識を垣間見る

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残念ながら主要登場人物の一人を演じていたポール・ウォーカーの不慮の死によってこの人気シリーズも幕引きとなりましたが、
全7作にも亘る長寿にもなったこのシリーズにも当然最初の1本があり、そこからすべてが始まっています。

で、もともとこのシリーズの第1作のコンセプトって

日本車チョーCOOL! けどやっぱオイラはHOTなアメ車LOVEだぜイエー!!!

な超B級なバカ映画だったと思うんですが、回を重ねるごとにどんどんスケールアップしていってとうとう大ヒットアクション大作にまで上り詰めたという印象。

元来は意識高い系な車マニアが主人公だったB級アクションも、次第にドル箱シリーズと共に製作費もアップ、テーマも変遷。

そんな人気シリーズを最初から最後まで劇場公開で見通したわけですが、
さて、これを機に発売になる全作品をパッケージした「ワイルド・スビード ヘプタロジー」なるBox商品がリリースされるということで、自分も購入をどうしようかと悩んでいるこの頃。

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そこで、おさらいの意味を込めて、改めて一作目から順を追って思い出していこうと思います。

 

まずは、すべての始まり『ワイルド・スピード』。

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【5秒でわかるあらすじ】
アメリカ人馬鹿だから車はまっすぐにしか走らないと思ってんだゼっ!!
日本がどんなにコーナリング性能高く足回り作っても意味がないんだゼ!!!

おそらくだけど、この当時日本で作られてたアニメ『頭文字D』の影響ってすごく大きいんだと思う。
バトルの描写でドライバーのシフトやペダル操作を描写するとか、カメラがエンジン内部まで入り込んでシリンダー内のピストンの動きを見せるとか、ぜったいにパクり影響されて描いてるんだと思う。

けど、ここはアメリカ。秋名も正丸峠もないのだ。

当時国内でも走り屋さんたちにチョー人気だったGTRやらランエボやらスープラなど日本車をこれでもかと投入したのに、ストリートバトルはもっぱら直線まっすぐ走るゼロヨンレースしかしないという車のポテンシャルを一切無視したバトルが繰り返されるヤンキーの日常。

本来ランエボなんて「馬力では劣るがコーナリング性能の高さで峠でハイパワー車に勝つ」ことだけを目的に詰めていった車種なんだから、山道に持っていってこそナンボのもんだと思うんだが、そんなことは一切しない。平地の直線路がバトルステージ。
これじゃパワーのある車が勝つに決まってるのに…

だいたいがアメリカ人の”車観”(くるまかん)って、カーレースならF1みたいなブレーキ競争とかコーナリングがどうとかいう緻密なレース運びのものよりもアホみたいな馬力で超加速するだけのストックカーとかハイスピードでオーバルコースをひたすらぐるぐる回るインディみたいなののほうが圧倒的に人気。一時F1はアメリカから撤退してたくらいだし。

車はハイパワーのエンジン積んでりゃいーんだよ!! V8を讃えよ!(それ違

という頭の悪さが全面に出た実に宝の持ち腐れな設定がむしろ爽快なのである。

そんなバカ映画こそのオモシロさを楽しんでたんだけどね。

 

2作目は『ワイルド・スピード×2』!
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【5秒でわかるあらすじ】
アメリカ人馬鹿だから車が曲がるものだってことに今更気づいたゼ!!

いや、冗談でも何でもなく、1作目はホントに車は曲がらない。ひたすらまっすぐ走るだけ。そんな印象だった。
なのでこの「2」の冒頭でコーナーを曲がる場面を観て「あ! 曲がった!!」と劇場の座席で叫んでしまったよ。いやマジで。

もともと1作目はポール・ウォーカー&ヴィン・ディーゼルのW主演だったけれど、
物語の主体がポール側だったとはいえ、どちらかといえばヴィンのキャラクターのほうが光っていた(頭だけではなく)のに、
この2作目でヴィンはあっさり降板。
この当時ヴィン・ディーゼルはいろいろと売り出し中だった印象があって、同時にSF(『リディック』)やら別のアクションシリーズの主役(『XXX』)やらに手を出してたものの、『XXX』は1作目で降板したりけっこう迷い道に嵌りこんでいたような感じ。たぶんそんな状況もあったのかなあ、と思ったりするんだけど。いろいろあったんだろうなあ。

ともかく看板のひとつを欠いたままの2作目。

テコ入れ(?)でデヴォン青木姐さんが出てくるだけでポイントな作品なんだけど、この頃はまだエロ度も低くて添え物扱い。
正直、後のシリーズにファミリーの一員として継続して出てくれて、ミシェル・ロドリゲスとエロいねーちゃん双璧で活躍してくれたらよかったのに…とずっと思うのであった。

3作目。『ワイルド・スピード×3 TOKYO DRIFT』。
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【5秒でわかるあらすじ】
アメリカ人馬鹿だけどようやく「どりふと」っていう言葉を学んだゾ!!
車は曲がるときにこの「どりふと」を使うと早く走れるらしいゼ!!!

ついにポール・ウォーカーまで出てこなくなり、スピンオフ的なエピソードに。
でも、個人的にはこれがいちばん楽しい。まァ東京の街なかを舞台に駆け巡るんで、「あ、この駐車場入口、六本木のハードロックカフェの近所のやつじゃん」とか「新宿伊勢丹の駐車場のあの螺旋スロープでヒルクライムすんのかー」とかいろいろと楽しめる要素も満載。

なぜかカメオで妻夫木聡くんが出てくるんだけど、噂ではこの「3」からメガホンをとったジェイソン・リン監督がゲイで、とあるところで妻夫木くんの映像を見て「アラなにこのかわいい男の子は!?」と興味を持ってオファーしたとかしないとか。※ホントかどうかは知りません

(余談だけど『SKY MISSION』で登場するジェイソン・ステイサム主演の『トランスポーター』シリーズでは3作目の監督がゲイで主人公の設定もソッチ寄りを強くしたら製作のリュック・ベッソンが試写を観て激怒したらしい※それが原因かどうかは知らないが『トランスポーター』はこの「3」で打ち止めになってる)

「ドリフト」がこの回のテーマってのは先述の『頭文字D』の影響がやっぱ相当に強いのかな、と思わせる。
自分的には「これいつドリフトキング土屋圭市がカメオで出てくんの?」と勝手にワクワクしちゃってたヨ。

 

んで、最後の最後で「これからもっとオモシロくなるでやんスよ!!」(©サルまん)とばかりに、引きを残してエンディング。

かつて東映社長だった岡田茂だったかが、「柳の下にドジョウは三匹いる」と言ったという。
その言葉を上回り、さらなるテコ入れでシリーズは続くのであった!!

 

――と、ここまでを俺的には『ワイルド・スピード初期3部作』と位置付けているんだが、
この3作はアメリカ人の車に対する頭悪そうな大雑把さがモロ出しで、そういう視点で見てると心躍るほど面白いんですよ。

ところが。

 

4作目、『ワイルド・スピード MAX』!
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【5秒でわかるあらすじ】
あーヴィン・ディーゼル帰ってきたしバージョンアップしたから日本車どーでもいーわ。

ここから車への愛が一気にトーンダウンしちゃうんだよねえ。
車がすべて、ではなくアクションのバリエーションとしての車、になっちゃう。

監督とか脚本家が1作目ほどあんまり車にこだわりがなかったんだろうなあ。

で、続くのが…

 

5作目『ワイルド・スピード MEGA MAX』!!
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【5秒でわかるあらすじ】
ハゲを増量したゼ!
金もかけたぜ! 湯水のように使ってやるゼ!!

我らがロック様、ドゥエイン・ジョンソンが加入してハゲ度アップ!
まーロック様は大好きなんで、そこは大歓迎。役者としても華があっていいしねえ。

気づいたら元来の貧乏くさいシリーズもすンげー金のかかった超大作になっちゃいました。
最大公約数的な顧客満足度は高くなってるんだろうけど、何となく初期のあの泥臭い空気が懐かしい。

カーアクションよりもクライムサスペンス風味のほうが主体になってきちゃったし。

誰でもそれなりに楽しめるってことは、マニア的な楽しみが消えるってことなんだよね。

 

6作目、『ワイルド・スピード EURO MISSION』…
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【5秒でわかるあらすじ】
シリーズもドル箱になったからまだまだ続けて儲けるゼ!!

なんだかもはやセレブ臭さえ醸しだされる画作りになっちゃった印象。
観ればおもしろい。満足できる。洗練されてる。

でも、なんかそれ以上がない。

ああ、あの泥臭い1作目の雰囲気が懐かしい…

Wikiによると、実は時系列的にはこれの後に「×3 TOKYO DRIFT」になる、ということらしい。

 

そして最終作となる7作目。『ワイルド・スピード SKY MISSION』。
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【5秒でわかるあらすじ】
またハゲが一人増えたゼ!!

敵役にジェイソン・ステイサムが投入されてまたまたパワーアップ。
と共に更にハゲ度が増した7作目。DVDのパッケージもハゲ度が高い
なんかこのシリーズ、回を重ねるたびにハゲが増えていくような印象。

感想としては、
『ワイルド・スビード』1作目から期待してきたことは、この着地点だったのかなあ。(いやハゲの話じゃなく)

 

もしポール・ウォーカーが生きていたら、まだまだシリーズは続いただろうと思う。
けど、「8」「9」「10」と続いていく先って、見たかっただろうか。そりゃ確実に面白いものになっただろうけど。

でも、このシリーズにヘリを落としたりビル壊したりっていうスケールのアクションを求めていたっけかなあ。
たぶん、もっともっと肉体派の素朴なカーアクションを求めてたんじゃなかったかな。
そんなふうに感じる。

 

それにしてもジェイソン・ステイサム、『トランスポーター』から続く車ジャンルの映画にやたらと出てきてたけど、
ついにこのシリーズにまで出てくるとは…と狂喜したんですよ。
もうここまで車映画に出てくれるなら、こんどはぜひ劇場版仮面ライダードライブに出て欲しい。悪役でもライダーでもいいから!!(妄想)

 

こうやって改めて通しで眺めてみると、どんどんスケールアップと共にアクションや面白さもパワーアップしていってはいるものの、
初期の頃の車にこだわった描写とかは鳴りを潜めていってしまったと思う。
何せ1作目じゃあちょいとデカールでデコレーションしてかえって貧乏臭くなった日本車をがんばってたくさん出してたくらいのが、最後の7作目じゃ平気でガンガンフェラーリやらポルシェやらブガッティを壊しまくってますからねー。
(もちろん高級車はデカールなんて貼らない)

トニー・ジャーだってたぶんもっとシリーズの前のほうで出演してれば、きっとランクも上の敵役になれてたと思うんだけど。
ほぼスタントマンみたいな扱いで、残念なばかり。

もともとの『ワイルド・スピード』ファンって、たぶん『バニシング in ターポ』とか『バニシング in 60』なんかが好きな層だろうと思うんだけど、たぶんそんなカーアクションマニアは回を重ねるごとに離れていったんじゃないか。

そんな風に思いながら、全作を完走した自分。

できれば、7作目の最後まで車への愛とリスペクトいっぱいの作品であってもらいたかったな、と思う次第です。

 

さて、ヘプタロジーセットはどうしようかなあ…

たぶん、7作目の最後、クレジット後の映像ってのは、ホントは更に続編を狙って撮ったシークエンスだと思うんだよね。
それ見ることができないのは、やっぱ残念かなあ。

主演のポール・ウォーカーは最近になってどんどんいい役者になりつつあったので、夭折はあまりにも惜しい。
この頃主演作も多くなってきて、映画好きの一人としては「ポール・ウォーカーって随分良くなってきたなあ」と思っていた矢先の悲劇でした。

 

R.I.P.。

 


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